PowerMOSによる実験4




本実験はPowerMOSによる実験3のパワーアップ版である。 実験1に使用した大きなヒートシンクを流用して製作を始める。5/27/2001

製作
  1. 8/18/2001より駆動装置の製作工数100% 投入
  2. 各相のユニットアンプ基板組み立て、基準発振器製作8/26
  3. ドライバー部組み立て、PowerMOSバイアス回路組み立て9/9
  4. ヒートシンクブロックに各基板取り付け9/16
  5. 配線作業9/22,23
    3相発振器動作テスト。波形がきたないので回路検討。
  6. 混変調による波形の変動はアンプの飽和歪みと判明。

PowerMOS1ケで試運転した。 本体側のコンデンサーコイルのコアを1ケ増設し、巻き線を クライン巻き6ターンとした。 PowerMOSによる実験3をほぼ再現できた。10/8


だが、3相発振器の位相が120°に合わず検討した結果、 トランジスタのばらつきによるものであった。選別して解決。 ある程度のレベルになったらPowerMOSを増設する。10/21
PowerMOSを増設して2ケにして並列運転してみたが、ドライブ不足のためか パワーがほとんど増えない。 ドライバーを増設してみても同じ巻き線につないだのではパラスティック 発振しやすく安定ではない。電力合成などの工夫を要するようだ。11/18

電力合成方法
予備実験として電力合成方法を試した。 4ファイラ巻き(4本巻線のうち3本がドレインのコイルで1本が出力コイル) 伝送線路トランスを用いて、3つのPowerMOSで並列運転してみたところ合成されて3倍になった。 ドライバーはそれぞれのPowerMOSに必要なので増設しなければならない。 実はドライバーのほうが価格が高い。トロイダルコアは3つ必要となる。11/25
コアの選定として実験を行い、H5A材、#61材、#6Yellow材をテストしてみた。 #61材が最も電圧が高くなった。また、巻き数は5ターンでは不足で、7or8ターン が最高値を示した。12/02

7ターンの5ファイラ+クライン巻き伝送線路トランスを3つ作成した。 反転接続の出力形式となるが水引細工をしているようできれいに巻けない。12/09 本体側にセットとしてみると座りがわるく良くないので普通の5ファイラ巻きとした。 (5本巻線のうち4本がドレインのコイルで1本が出力コイル) 上写真
機関のフェライトブロックをFT240-#61材に変更した。 比透磁率がH5A 材より1桁小さくなってしまうが、稼働周波数を考えて より最適なものと判断した。12/16
PowerMOSを増設して4ケ×3相分を取り付け、ドライバーもそれぞれ に付けた。電源回路は移動させ、パスコンを追加した。
ドライバーを増設したので、12V電源に電流が取れるものが必要だが、どうもこれが 調子が悪い。1/6
調べたところドライバーの電源フイルターのインダクターが負荷になっていると 電源が正常動作しないことが判明。μA709の電源回路を修正し、 レベルシフトを外した。負荷抵抗を15V 三端子REGからではなくUNREGから取った。 やはりオペアン電源は限界があり、良くない。
ドライバー出力が混変調ぎみなのはドライバーのオーバードライブのためである ことが分かり、抵抗追加できれいになった。 1チャンネル分でテストしたところ80Vp-pが得られた。1/14
残りの2チャンネル分をテストしたところ50Vp-p程度しか出ない。ドライバーや PowerMOSのバラツキによるものかとチャンネルを入れ替えたりして調べたら、 トロイダルコアのバラツキであった。正確な三相交流にするには同じ出力に しなければならないので、選別する必要がある。1/20
トロイダルコアを入れ替えた。どの相もだいたい60Vp-pになるようにした。
最終的に電力合成方法として三相交流でテストしたところ20Vp-p程度しか出ない。 どの相も同じ出力とインピーダンスとしてあるが、やはりこの系は単純ではなく、 インピーダンスが以外と低いということと、相関電流(電流こそ流れないが、 お互いに影響し合うベクトル合成のため)もいくらかはあるらしい。 失敗に終わった。 トロイダルコアが3つの場合と1つの場合では動作が違うが、この辺も検討する 必要がある。1/27

PowerMOSを4つ増設
トロイダルコアを1つにし(一番上の写真)、電力合成方法ではなくそのままPowerMOSを並列に 2つで運転してみた。三相交流でテストしたところどの相も30Vp-p出るようになったが、 電圧を上げようとするとパラスティック発振してよろしくない。2/3
PowerMOSを並列にしているわけだからインピーダンスは半分のはずだ。 そこで、バイファイラ巻き(2本巻線のうち1本がドレインのコイルで1本が出力コイル) 伝送線路トランスで2倍の電圧を狙ってディスクに供給してみたが、 なんと電圧合成されて単相にしかならない。これも PowerMOSによる実験3の両端の位相が逆という同じ現象が発生している。 PowerMOSのドレインは3相なのにディスクでは単相だ。2/17
やはり1枚のチタン酸バリウムディスクに電極3つとなると能動素子で直接ドライブ しないとダメなようだ。間に受動素子が入ったのでは単純な波形合成器になるだけである。 ディスク上に3つの『生きた電流源』が必要である。伝送線路トランスは使えない。 また、球形コンデンサーへの接続も中心に接続する必要があり、天辺の電圧波形と 中心では異なる。宇宙機の実験に地球遺伝子の進化の実力を試すのはおもしろい。2/24

トロイダルコアと巻き線変更
2つのチャンネルの位相が近く、正確な三相交流にならないので、1つのトロイダルコア ではよろしくない?と思い、トロイダルコアを3つの巻き線7ターンで運転してみた。 (下写真)それでも改善しない。色々調べたら電気系統ではなく球形コンデンサーの内部の給電する 銅箔との接触が緩んでいたために電気的結合が甘かったということだった。 ディスクの表裏をしっかり結合するようにボルトで固定した。中心部からは2.5□の銀メッキ テフロン線で引き出した。PowerMOSのドレインはそれぞれに配線して球形コンデンサーに 給電するようにした。これらの改修が効いて各相PowerMOS2ケで50Vp-pの三相交流が得られた。3/3
PowerMOS4ケに増設してみた。各相80Vp-p程度にアップしたが、どうも アースを取る位置によって測定値がまちまちである。ある相だけ電圧が異常に高い。 高周波のパワーアンプであるためオシロのアースをとる基準点が何処にあるのか難しい。 約60〜50Vp-pらしい。それよりも調整して正確な三相交流になっているかどうかも 確認できない。印加電力は約120Wである。 おもしろいことにドレインの配線をまとめて1本にしたものと4本とでは電圧値が 違ってくる。この実験機特有の『生きた電流源』という扱いになる。3/9


アースを取る位置によって測定値がまちまちという原因は3相発振器のドライバー からPowerMOSへの電流が影響していると判明した。そこで3相発振器の位置が電気的に 真ん中になるように移動させた。上写真
また、アースも弱いことがわかりその対策も含めて位置を変更した。3/29
やはり、正確さを期するにはアースを取るのではなく、球形コンデンサーに ピックアップコイルを近づけて測定する方法が良いと考えられる。 絶対電圧は解らないが、相対的な電圧と位相は信頼できる。 これならある相だけ電圧が高いということもなくなるはずだし、 位相も正確に調整できる。各相の電圧調整が位相調整にもなるので、 かなり難しい。4/14
各相の位相差は同じでなければならないが、ピックアップコイルを近づけて 測定すると、10.4nsecに対し2nsec の差がある。出力段を入れ替えたり、 接続するディスクの電極を変えたりしてみたが、同じだった。 原因は3相発振器にあると思われる。4/21
後日検討したところ3相発振器のユニットアンプのf特が問題だと判明した。 つまり、伝達時間が大きいと精度が出ない。これは波形が汚いためf特を 下げていたためで、f特を60MHz,10Vppに戻した。すると各相の位相差は同じになった。 ある相だけ電圧がやや高いが位相差はほぼ120°になった。
ピックアップコイルを近づけて球形コンデンサーの間の電界分布を測定した。 その結果、各相ごとにリニヤに位相がずれていき、中間では中間の位相になっており 正しい円偏向であることが確認できた。5/4



PowerMOSを別のメーカーの同一仕様のものに交換してみた。電源電圧を 70VDCにして駆動すると各相80〜90Vp-p程度にアップした。 最近のPowerMOSを探せばもっと性能が良くなっている可能性がある。
最近の品を探しに行ってみたが現在使用中のものさえ売っていない。ほぼ同等の 代替え品を12ケ購入。話はそれるが雷鳴がしているときの実験は危険だ。 過去に落雷した誘導で実験機が爆発したという報告があった。5/25

PowerMOSを8つ増設

代替え品4つで並列運転してみたところ現在使用中のものと同等の性能 であった。電源フィルターを移動させPowerMOSを増設して8本とした。 かなり大掛かりな改造なので時間が掛かる。6/9
PowerMOSの耐圧には余裕があるので電源電圧を上げることができる。 そうすれば200Vp-p 近くは達成できるだろう。この電圧になってくると ネオン管は空中にかざすだけで点灯するようになるので目標の3.の項目が 確認できそうだ。
増設して8本で1cH だけの仮運転してみたところ100Vp-p以上は出た。 しかし、電圧を上げようとするとパラスティック発振してよろしくない。 いつもの現象で、解決する必要がある。特にドライバー周りが難しい。 PowerMOSにしても素子のスペック以上の動作であるので、仕方ない面もある。6/16
やはり1つのプリドライバーでは8本並列運転は難しい。6/23
プリドライバーを2本にしてドライバーを4本ずつドライブすると 良いようだ。ドライバーの12V電源も4Aに達した。6/30
プリドライバーを今までのものより電流がとれるものに交換した。 すると、やや不安定ながら1cH で120Vp-pは出た。7/7
パラスティック発振の原因の1つは1/n の混変調であるが低い周波数では 素子のゲインは大きく、ちょっとでも1/n の信号が含まれていると より増幅されてしまうためであった。基準発振器にハイパスフィルター を追加したが、あまり効果はない。 決定的なのはやはり電流経路である。3相の位相精度が問題になる ので、アマチュア無線の送信機程度の出来では不足ということである。 今まで、金田式の高速電源 などを造ってきたが、安定動作のためには電流経路とアースの設定 が最も大切だ。どんなに良い部品や回路を用意しても性能が出せない。 電流経路とアースを1から見直した。7/21
1/n の混変調について調べると基準発振器は3'rdのオーバトーン 発振であるためどうしても基本波が残るということであった。 水晶発振器は純粋な振動をしているわけではなく、メーカーや ロットによって動作が違い、出力波形も異なる。これは水晶の形状や研磨、 電極の付け方、ホールドの状態によって違うからであった。 やはり、純粋な正弦波のみが必要な場合はハイパスフィルターや 同調増幅回路などの工夫が必要で設計し直した。7/28
基準発振器を製作して入れ替えた。新規の3'rdのオーバトーン のトランジスタ発振回路にハイパスフィルターとFETの同調増幅回路 を追加したものである。これでPowerMOS4つで並列運転すると下写真の ように70Vp-pは安定に出る。位相精度も良く正確な三相交流となっている。8/10


パラスティック発振のもう1つの原因としてDC バイアス回路のインピーダンスが高く、 ドライブ波形がカブって不安定ということがあったので、 積層セラミックの10μFなど追加してみたが、この周波数では効かない。 リニヤアンプのバアイス回路などでは性能的に不足だ。 そこで、定電圧ドライブとして電流を流すDC バイアス回路 としてインピーダンスを10Ω以下に下げて改善すると、いくらか安定になった。8/18
各相のパワーラインの引き回しが近いとカブって不安定ということも 存在し、シールドするようにヒートシンクに貼り付けると良いことが解ってきた。 三相交流電圧として各相100Vp-pは安定に出るようになった。 ディスクの周囲から給電するのではなく、実機のように磁気柱から球形コンデンサーにつなぐ 配置が望ましい。8/25
実機に近い配置にしようとしてみたが、配線が延びること、作業性が悪くなるので 諦めた。せっかく分解したので球形コンデンサーの配線を3.5□、トロイダルコアの3つの巻き線 を2.5□と太くした。その結果、10% 程度の電圧アップがあった。やはり高周波のため 表面積が大きいと良いようだ。 DC バイアス回路はさほどの効果もないので戻した。9/1
1相だけやや電圧が高い原因を追及してみると、配線が球形コンデンサーにカブっている ことが解った。意外と球形コンデンサーは敏感で、誘電体に取り付けてあるから 電気を吸い寄せる。このため配線の長さが長いだけで各球形コンデンサーに影響して よくない。試しに配線を3cm 短くするだけで電圧も安定度も良くなる。 球形コンデンサーの直下にPowerMOSを配置すべきだ。 この配置での実験は限界がありここで見切りをつけPowerMOSによる実験4.5に 移行する。9/8


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